平成15年度 年末調整
1.年末調整とは
毎月、給与支払の際に源泉徴収を行いますが、1年間に徴収した税額と年間に収めなければならない税額は個人の扶養関係や各種控除の有無により一致しないのが通常です。
給与の支払者は、1年間の給与所得から源泉徴収されている所得税を、その給与総額が確定する年末時点で精算しなければなりません。
その精算のために1年間の所得税を計算し、源泉徴収されている金額との過不足額を求め、その差額を徴収または還付する手続きを「年末調整」といいます。
給与所得者は、通常この年末調整を受けることにより、確定申告する必要はありません。
しかしながら、所得を2ケ所以上から受給している等、一部の給与所得者は確定申告の必要があります。
年末調整は、原則として給与の支払者に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出し、年末まで会社に勤務されている方が対象となります。
2.年末調整の対象となる人・ならない人
年末調整の対象者 |
年末調整の非対象者 |
- 1年を通じて勤務している人
- 年の途中で就職し年末まで勤務している人
- 年の途中で退職した人のうち、次の人
- 死亡により退職した人
- 著しい心身障害により退職した人で、本年に再就職ができないと見込まれる人
- 12月中の支給日に給与を受けた後に退職した人
- 年の途中で海外勤務などにより非居住者となった人
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- その年の主たる給与収入が2,000万円を超える人
- 災害減免法の規定により、その年の給与に対する源泉所得税の徴収猶予または還付を受けた人
- 2ケ所以上から給与の支払を受けている人で、他の給与支払者に扶養控除等申告者を提出している人、あるいは扶養控除等申告書を提出していない人
- 年の途中で退職した人で上記「年末調整の対象者」の3.に該当しない人
- 非居住者
- 日雇労働者など源泉徴収税額表の日額表の「丙欄」適用者
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- 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない場・・・
年末調整の対象にならないだけでなく、税額表の乙欄が適用され、多くの税金を徴収しなければなりません。
このため、1ケ所から給与の支払いを受けている人には、必ず最初の給与の前日までにこの申告書を会社に提出させるようにすべきです。
- 年末調整をしてない人は、確定申告により所得税を精算することになります。
- 所得控除のうち「雑損控除」「医療費控除」「寄付金控除」について・・・
年末調整で行うことができないため、確定申告することになります。
3.年末調整に必要な書類
年末調整をおこなうにあたり下記の書類を用意します
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 |
- この申告書が、年末調整の基本となります。
- 通常、この申告書はその年の最初の給与支給日の前日までに会社に提出することになっています。
- 申告書を提出した後に、扶養者等に異動があった場合には、会社に異動申告書を提出しなければいけません。
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給与所得者の保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書 |
- この申告書が、その年の生命保険料控除・損害保険料控除・社会保険料控除・配偶者特別控除を受けるための書類となります。
- 年末調整実施日までにこの申告書を回収してください。
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保険料控除証明書 |
- 生命保険・個人年金・損害保険・小規模企業共済等については、保険会社から送られてくる保険料証明書を添付しなければなりません。
但し、年間9,000円以下の生命保険及び社会保険については、添付する必要はありません。
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給与台帳等 |
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4.年末調整の手順
(1)必要な申告書の配布 |
会社で年末調整を行う担当者は、上記3の1,2を11月の中旬頃までに、従業員全員に配布します。
そして、12月上旬までに上記3の1,2,3を回収すると比較的スムーズに事務処理を行えます。 |
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(2)各々の給与所得等の集計 |
会社の全従業員の給与台帳を完成させます。
次に各々の給与と賞与の総額・源泉徴収税額・給与所得控除後の給与所得の金額を計算します。 |
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(3)必要な申告書の回収及び内容確認 |
上記3の1,2,3を回収し、記入漏れ・記入不備・必要添付書類等、申告書の内容を確認します。
不備があった場合は従業員に訂正しもらいます。
この申告書に記載された配偶者・扶養・障害者・老年者控除等について、それぞれの条件を満たしているか確認します。
これらの控除の対象の判定は、年末調整実施日の現況によります。
合計所得金額については、年末調整実施日現在の見積額によります。
年齢は、12月31日(年の中途により死亡した人は、その死亡日現在)のものとなります。
また、年の中途に、控除対象配偶者・扶養家族が死亡した場合でも、配偶者控除・扶養控除等を受けることができます。 |
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(4)課税給与所得金額及び税額の計算 |
回収した申告書に基づき、各種所得控除額を計算します。
次に給与所得額から各種所得控除額の合計額を控除し、課税給与所得金額と年税額を計算します。 |
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(5)過不足額の計算と還付または徴収 |
源泉徴収税額と計算した税額を比較して、個人別に所得税の過不足額を計算し、過不足額を還付または徴収します。 |
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(6)計算後の所得税の納付・事務手続き |
年末調整後の翌年1月分の所得税納付書及び支払報告書等の書類作成をします。 |
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5.源泉徴収票の提出
年末調整が終わったら源泉徴収票を作成します。
「給与所得の源泉徴収票」は、給与等を支払ったすべての者について作成し交付することになっています。
- 税務署へ法定調書の合計表に添付して提出する者
- 法人の役員については、その年の給与等の金額が150万円を超えるもの。
- 弁護士、司法書士、税理士等については、その年の給与等の金額が250万円を超えるもの
(報酬として支払う場合には、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を提出することとなます)
- これら以外の者については、その年の給与等の金額が500万円を超えるもの
- 給与所得者の扶養控除等申告書を提出した者で、その年に退職した者や災害により被害を受けたため、給与所得に対する所得税の源泉徴収の猶予を受けた者については、その年の給与等の金額が250万円を超えるもの
ただし、法人の役員については、50万円を超えるもの
- 給与所得者の扶養控除等申告書を提出した者で、その年の主たる給与等の金額が2,000万円を超える者は、年末調整をしないことになっていますので、すべてのもの
- 給与所得者の扶養控除等申告書を提出しなかった者で、給与所得の源泉徴収票の月額表又は日額表の乙欄又は丙欄の適用者については、その年の給与等の金額が50万円を超えるもの
- 市区町村役場への提出
すべての受給者の分の給与支払報告書を受給者のその年の翌年の1月1日現在の住所地の市区町村に2枚提出します。
- 従業員への交付
「給与所得の源泉徴収票」は提出範囲にかかわらず、その年の翌年の1月31日までに、年の中途で退職した者の場合は、退職の日以後1カ月以内にすべての受給者に交付